世羅高校の強さとは
昨日京都で行われた全国高校駅伝男子の部で世羅高校が
7度目の優勝を飾った。
昨年はアンカーがトップで競技場に帰ってきながら残り
300mのところで鹿児島実業に抜かれるという悲劇を
味わっていただけに、喜びもひとしおだろう。
レース内容は全区間の中で2番目に長い距離の3区で
ケニア人留学生のチャールズ・ディランゴ選手が8位から
一気にトップに立ち、逆に2位に1分近い大差をつけ、
そのままアンカーまで突っ走った、というところだ。
ケニア人=助っ人、という感は正直否めないかもしれないが
世羅高校の場合、大学駅伝や実業団駅伝とは意を異にする。
実績のある高校生や大学生のランナーを入部させ、
メンバーに組み込むというのが大学や実業団のやり方だ。
世羅高校は県立の公立高校だ。なのになぜ毎年のように
強い留学生が出てくるのだろうか?
世羅高校のある広島県世羅町はひとことでいうと「駅伝の町」
なのだ。
世羅高校は、広島県の真ん中あたりに位置するこの田舎町から
第1回全国高校駅伝に出場して優勝をしている。
この優勝が、娯楽の少ない田舎町では降って沸いた騒ぎになり、
それ以来、世羅高陸上部は町の人たちの期待を一身に受け、
高校駅伝での好走を宿命づけられたのだ。
地元の人たちは、学校の裏山の山道をを手作りで整備して
クロスカントリーの練習ができるようにし、今でも毎日
怪我に繋がるような石ころが落ちていないかチェックをする。
陸上部全員が寮生活をしている寮では地元のおばさんたちが
地域の方から無償で差し入れられた食材を使って、ボランティ
アで炊き出しを行う。
昨日の京都西京極陸上競技場には地元からの応援団が600名も
馳せ参じたというから、熱の入れようも半端ないのだ。
十数年前から他県の強豪私立高校でケニア人留学生が駅伝を
走るようになり、それなりに結果を出し始めていた頃、
時を同じくして世羅高校は低迷期を迎えることとなる。
もはや世羅高陸上部そのものが人生の一部となっていた地元の
有志の人々の発案で世羅高校にも留学生を迎え入れよう、と
いうことになった。
ただ公立高校ゆえ予算など無く、留学生の生活費、学費や日々の
世話、日本語教育を全て地元のボランティアで賄っているという。
中学校を卒業したばかりの留学生は、陸上エリートというわけ
でも無く、とにかく真面目な子どもをということで受け入れる。
だから日本に来た時点ではべらぼうに速かったわけではないのだ。
留学生はこの地元の人たちの心からの善意に応えられるよう、他の
陸上部員の誰よりも早起きをして、朝の5時には朝練習を始める。
放課後の練習でも手抜きや妥協を許さず、他の日本人高校生たち
にもアドバイスをし、誰からも尊敬される存在なのだ。
ケニア人を語るときに、その速さや素質を羨むのではなく猛練習に
耐えうるポテンシャルと精神力を羨むべきだろう。
他の高校のケニア人留学生よりも世羅高校の留学生のほうが強い
のはこうした地域住民に支えられていることが非常に大きな要因
であることを知っていただきたいし、留学生ありきの優勝などと
いう偏見だけは持つべきでないと思う。
留学生に引っ張られて日本人の高校生が強くなり、全国大会で活躍
する世羅高校のランナーの雄姿にあこがれて、素質のある中学生が
世羅高校入学を目指す。
入学すると地域の人々の熱い応援を肌で感じ、期待に応えたいと
願うようになる。
この好循環が今の世羅高校の強さなのだ。
Annyeong.
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